大阪都構想への住民投票は否決され2015年に続いて市民は大阪市の存続を選択した。大阪都構想が提唱された背景には、我が国第二の大都市でありながら東京との格差が広がっていく大阪住民の危機感があった。大阪市を廃止し大阪府を東京と同じ「都」にするという大胆な改革案は危機感を期待感に変えるに足るインパクトの大きい政策であり、大阪維新の会への支持拡大にも繋がってきた。
一方で政策としての大阪都構想は、地方自治制度という統治機構の変革を地域浮揚に向けた改革の政治的旗印として活用するという、究極の「カタチから入る政策」でもあった。カタチから入る政策は有権者に分かりやすく期待感を集めやすい反面、いつしか本来の目的を外れてカタチの実現自体が目的化する傾向が生まれやすい。大阪市の廃止という後戻りのできない改革が本当に大阪の浮揚に繋がるのか、それを見極めるのが今回の住民投票における最大の焦点であったといえる。
二重行政の弊害の要因は政令指定都市と都道府県が併存すること自体にあるのではなく、両者の役割が不明確なことで結果的に無駄な事業が実施され、連携不足から非効率な行政形態が生まれることにある。広域自治体である大阪府と基礎自治体である大阪市とが明確な役割分担と連携のもと、行政の各分野でそれを徹底することで二重行政の弊害を避けることは十分可能であると考える。これまでの議論と二度の住民投票を通じて市民が自ら地方自治制度のあり方を選択したことは大阪都構想の大きな成果である。今後はこれまでの議論を生かしながら、カタチではなく実をとる政策が着実に実施されることを望む。
(2020.11.4 新聞掲載原稿より)