コロナ禍への対応においては、政府と地方自治体がその方向性をめぐって意見が食い違い、また責任の所在に関する議論が見られる。これらを地方分権が進んだ結果の国と地方の政策決定の「競合」と見る向きもあるが、これは競合ではなく政策決定者の「不在」に陥っている状況ではないかと考える。
地方分権推進の理念は、国が実施するよりも地方自治体が実施した方が住民にとって良いサービスが提供できるという考え方であったが、それが進められた結果、他の要因の影響も含めて国の政策能力が著しく低下し、本来は国がやるべき仕事が実施できなくなっている状況を強く感じる。
コロナ禍への対応においては、人命を守るための蔓延防止、生活を維持するための給付金給付といった、本来は国が担うべき政策課題に対し、中央政府が責任を持って決定し、実施する能力がないことが明らかとなった。これは国と地方の役割分担の見直しではなく、中央政府の機能低下の問題としてその再構築を考えなければならない。
[2021年研究会での発言より]