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兵庫県政の混乱に思うこと

内部告発を行なった職員の自死という組織として最悪の事態を招いた兵庫県庁は、世論の高まりにも関わらず知事が辞任を拒否し続け、全国的な注目と非難を集めつつ県民が県への信頼を低下し続ける最悪の状況となっている。神戸で生活していると、普段は県に全く関わりのない人々も最近ではまず出てくる話題はこの話になり、毎日の報道に暗く辟易した気持ちになるので知事には早く辞めて欲しいという声が高まっているように感じる。

 

外部委員として兵庫県庁の仕事をするようになったのは関西学院大学に赴任した2017年以降であるが、ここ3年余りの兵庫県庁は一貫して内部が混乱している状況が伺え、外部委員としての仕事をするにあたっても前提としての県庁の方向性が定まらず、外部委員会に何を求めているのかが不明なことが多かった。

 

その都度職員の方々との議論を重ね、何とか役割を果たすべく努力していたものの、そこから垣間見えたのは兵庫県庁の組織マネジメントが崩壊しつつある状況であった。知事のパワハラ云々については組織外の人間には全く分からないし、内部告発への一連の対応の失敗とは切り離して考えるべきであると思うが、個々の県庁職員の方々は真摯で真面目な方がほとんどであるものの、近年の兵庫県庁は外から見る限り、政策の方向性と意思決定のプロセスが定まらず、組織全体として右往左往の状況が続いているように見えた。

 

過去に首長が任期途中に辞任した例は多々あるが、刑事事件や政治的な責任に伴うものが多かったように思う。一方で今回の兵庫県の混乱の要因は、直接的には内部告発への対応の誤りであり、その背景には県庁の組織マネジメントの失敗があると言える。兵庫県庁という巨大組織は多くの役所がそうであったような従来型の管理型組織である。知事交代に伴う県民の期待に応えるためには、まずは政策そのものよりもそのベースとなる県庁組織を県民志向・政策志向の経営型組織に変革させることが必要であった。

 

管理型組織を経営型組織に変革させるためには意思決定プロセスや人事などを含めた大きな改革が必要であるが、それには緻密な戦略と職員や議会を含めた合意形成などの難しい舵取りが求められる。兵庫県における今回の不幸な混乱は、首長政治家に求められる高度な組織マネジメント力の欠如に起因するものとして、これからの地方自治体の行政運営にも大きな教訓を残すものと思う。